《MUMEI》

「さっきも言っただろう?善彦にやられたことをした。って。」

ついさっき、明智が呼吸困難にまで陥った現象(ソウ)に入ったのが、随分前の事に感じられる。

「じゃぁ、俺があの、ソウとかに、無意識に入ったりするのは、遺伝ってことなのか?」

「まさか。そんな事があって堪るか。」

即座に山男は一蹴する。

「まぁ、兄弟だからこそ似た物があるんだろうけれども。
ソウって言うのは、まず、人間が持つ力の及ぶ現象では無いよ。間違いなく、遺伝でソウを引き継いだなんて事はない。兄弟が関係あるとしたら、波長が、似ていたんだろう。」

「波長?…人間が持たない。って、現に、先生は…?」

いくら、普段の成績が良い明智と言えども、いい加減湧き出る新しい情報にはついていくのが難しくなってくる。

「焦るなよ?時間制限があるって言っても、20分を15倍にしたんだ。単純計算で、5時間。ここを出るのに1時間はかかると思うから、4時間、余裕を見て3時間半って所か。
で、今までで大体20分位だから、残りは3時間ある。そこまで、俺と2人っきりってのも嫌かもしれないけど、大切な話なんだ。」

「そうですね…」

「おっと、どっちに対しての同意だ?
…あまり実感は無いかもしれないけどな、これから、少なくても1年間は、精神的にも肉体的にも無理を強いられる。それに、危険な目に遭う可能性だって、否定できないんだ。」

少し、顔を曇らせた山男は、しかししっかりと聞かせるような声で語りかける。

「特に、これから話すことは核心になるよ。
しっかりと頭に刻んでもらわないと。」

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