《MUMEI》

先頭を歩くケンイチに隠れるようにしながらユウゴは歩く。
ドア付近には警護係だろう男が二人立ち、入っていく人たちを見ている。
やはり、警備が厳重になっているのだろうか。
そう思ったが、男たちはただ流れていく人たちを眺めているだけで、何か確認している様子はなかった。
背後に聞こえていた織田の足音が止まる。
振り向くと彼はユウゴに向けて頷くと、一人別方向へと歩いていく。
周りの様子を確認しに行くのだろう。
ユウゴは織田の後ろ姿を見送ると、ケンイチの肩を叩いた。
彼が顔だけを少し後ろへ向ける。
「向こうの横断歩道から渡ろう」
ユウゴの声にケンイチは眉を寄せた。
「中で荷物チェックしてるのか見たい」
「見えるのかよ?」
「俺は頭もいいけど、目もいいからな」
するとケンイチは馬鹿にしたように笑った。
二人は車道沿いに歩き、向かいに見える公民館の前を通りすぎる。
ユウゴは目を凝らした。
開け放たれたドアの向こうには狭いスペースがある。
そのすぐ向こうに、もう一つドアがあるのが見えた。
おそらくスペースはロビーのような場所なのだろう。
入口から中に入った人たちはロビーもどきに置かれてある長机で何か記入してから奥のドアの中へ消えて行っている。

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