《MUMEI》

「んっ…ぁ、ダメ///」

恥ずかしがる彼の姿を眺めながら、もっとそんな姿を見つめていたいと思っていると、彼は何かを思うように横向きになると唇に指を当てながらポツリと呟いた。

「何て言うか…克哉さんって優しいんですね///」
「ぁ?……あぁ…」


優しい…。

という事は、彼にとっては物足りないって事なのか?



「お風呂、入ってきますね」

彼は残る余韻に身体をふらつかせながら、近くにあったバスタオルを羽織ると風呂場の方に歩いて行った。

そんな彼の後ろ姿を見送ると、付いていたゴムを捨てながら部屋を眺めた。

小さい頃、こんな日本のアパートに住んでいた事を浴衣を羽織りながらぼんやりと思い出す。

時代は違うが、同じ日本なのでなんとなく似たような間取りで、低いキッチンに小さな冷蔵庫。

やっぱり中には納豆に梅干しに、そして俺のビールが入っていた。

ドイツではビールはそんなに冷やさずに飲むのだが、この前そのスタイルで飲んだら炭酸の入ったただのリキュール味になってしまったので、やっぱり日本のビールは日本のスタイルで飲むのが一番という事で冷蔵庫に入れている。

”郷に入っては郷に従え”か…。

子供の頃から苦手だった梅干しにも、チャレンジしてみようか…。


その子供の頃にしていたように、風呂場の中を覗き込んでみた。

中ではアキラがシャワーを浴びていて、その水滴がキラキラと彼を輝かせているのが見えた。

「……」

幼い子供のようにじっとその様子を眺めていると、今にも吸い付いて甘くしっとりとした香りを嗅いでみたくなる程、瑞々しい肌をしている。

「ぅわっ!…克哉さん///」
「あ…」

風呂場のドアの前で覗いていた俺に気付いたアキラは慌てて身体を隠そうとしていた。

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