《MUMEI》

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そうやって、『元サヤ』に戻ったわたし達だったが、その後も元治のわたしへの裏切りは続いた。原因はもっぱら、浮気だった。


元治は寂しがりやで、独りではいられない質だったから、ちょっとでもわたしとの間にスレ違いが生じると、適当な女の子と浮気を繰り返した。


浮気をするその度に、彼は突然わたしの前から姿を消し、ほとぼりが冷めた頃に何食わぬ顔をして、わたしの前に現れるのだ。


『もう嘘はつかない』

『絶対、傷つけない』


わたしのもとへ戻ってくる度、元治は真剣な様子でわたしに誓っていたにもかかわらず、気づくとまた急に姿を消してしまうのだった。


当然だが、わたしはそんな元治の不誠実な態度に腹を立てていた。
でも、彼の裏切りを咎めることは一切しなかった。


元治が浮気繰り返すのは、わたしにも原因があるのだろうし、

それよりも、わたしが彼を責め立てたり、何かしら文句を口にすることによって、決定的な別れを告げられてしまうのが怖かった。



―――ただ、好きだった。



どんなに嘘をつかれても、

何度裏切られても、


元治の全て受け入れる自信が、わたしにはあった。



だから、彼の行動全てに目を瞑り、

彼がいなくなっても、じっと耐え忍んで、独り涙をのみ、

再び、わたしの所へ戻ってきた時には、文句ひとつ言わず、笑顔で迎えていた。





それが、たくさんの嘘によって築かれたこの関係を続けるために、


『最善』だと思っていた。





―――3年前の、


『あの日』が訪れるまでは…。





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