《MUMEI》 . そうやって、『元サヤ』に戻ったわたし達だったが、その後も元治のわたしへの裏切りは続いた。原因はもっぱら、浮気だった。 元治は寂しがりやで、独りではいられない質だったから、ちょっとでもわたしとの間にスレ違いが生じると、適当な女の子と浮気を繰り返した。 浮気をするその度に、彼は突然わたしの前から姿を消し、ほとぼりが冷めた頃に何食わぬ顔をして、わたしの前に現れるのだ。 『もう嘘はつかない』 『絶対、傷つけない』 わたしのもとへ戻ってくる度、元治は真剣な様子でわたしに誓っていたにもかかわらず、気づくとまた急に姿を消してしまうのだった。 当然だが、わたしはそんな元治の不誠実な態度に腹を立てていた。 でも、彼の裏切りを咎めることは一切しなかった。 元治が浮気繰り返すのは、わたしにも原因があるのだろうし、 それよりも、わたしが彼を責め立てたり、何かしら文句を口にすることによって、決定的な別れを告げられてしまうのが怖かった。 ―――ただ、好きだった。 どんなに嘘をつかれても、 何度裏切られても、 元治の全て受け入れる自信が、わたしにはあった。 だから、彼の行動全てに目を瞑り、 彼がいなくなっても、じっと耐え忍んで、独り涙をのみ、 再び、わたしの所へ戻ってきた時には、文句ひとつ言わず、笑顔で迎えていた。 それが、たくさんの嘘によって築かれたこの関係を続けるために、 『最善』だと思っていた。 ―――3年前の、 『あの日』が訪れるまでは…。 ****** 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |