《MUMEI》
「美青年…、ぐい?……、マジで?佐伯さんが?始めて聞いた…」
確か佐伯さんは裕斗の親父さんと…、うん、裕斗にちらっとしか聞いてはいないんだけど、たしかに付き合ってるって聞いたよな。
しかも付き合いはかなり長いとか、あ、裕斗の親父さん、40台だし青年って年齢じゃないし、なんてったって裕斗の親父さんはワールドカップの…
「あ〜っ!いや、冗談です!悩むな惇!冗談だから、な?ごめん、ただのヤキモチ!ごめんっ!もう考えんなっ!」
隆志は俺の肩からバッグを奪い、俺の腰に手を添えた。
「あ〜もうどっちが本当?」
「冗談が本当、ごめんなさい」
「もー…、」
まあどっちでもいいけどさ。
もう佐伯さんとは多分食事もないだろうし。
あんな凄い人が俺なんかもう相手になんかしないだろう。
つか、隆志には悪いけどさっきのキスはちょっと嬉しかった!
だってあの佐伯さんだもん!
傍で見たら綺麗だったな、かっこよかった。
「なー、惇にやけてる…、まさかさっきのキス嬉しかったんじゃないだろーな」
「!う、嬉しいに決まってんだろ!俺はた、隆志の事……
好きなんだから…」
なーんて慌ててごまかしたら…
ヒョイッ!
「ぅうあぁあっ!なっ!隆志ッ!」
いきなりお姫様抱っこをされた!
俺は咄嗟に隆志の首にしがみつく。
「ならもっと喜ばせなきゃな…」
「〜〜〜〜ッ…」
耳元に低い声でそう囁かれて、俺の全身に甘い痺れが走った。
俺は佐伯さんにせっかく此処まで送ってもらったのに、そのまま隆志の車に乗せられ、隆志のマンションに誘拐された。
誘拐途中、隆志は一昨日とは違う桜の満開な道の前を通ってくれた。
これを俺に見せたくて隆志は俺の帰りを待っていたらしい。
隆志のマンションにつくまで俺は隆志の腕にずっとしがみついていた。
やっぱりどんなに憧れてる人よりも、俺は隆志と居る事が一番嬉しい…。
俺は今、凄い幸せです。
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