《MUMEI》

―キイィン―


音が響く、そして消えたと同時に黒い影がミツの後ろに顕現した。


「行くよ、ヘルハウンド。」

『了解です。』


地獄の魔犬の名を持つ、漆黒の毛皮とルビーのような深紅の瞳の獣はミツに頭を垂れた。


「瀧を追って。」


そう言ってヘルハウンドの背にまたがる。


一声吠えると、漆黒の獣は、頭上の影を追い、走り出した。


向かう先には、壊れ、風雨に晒された廃墟。


それはかつてのイージスが存在した場所。


その建物の中、眠る綾乃の傍らで近づいてくる気配を感じながら、黒烏は心底楽しそうに笑った。


―さぁ、ゲームの始まり始まり―

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