《MUMEI》
今は何世紀だ? 3
耳に息がかかる。死ぬほど怖い。
マキは思わず目をきつく閉じ、受け入れ難い現実に身を震わせた。
「心配すんな。おまんに危害は加えん」
「!」
マキは目を見開いてオランウータンを凝視した。
(しゃ…喋った!)
しかも日本語。しかし東京弁ではなさそう。マキは気が動転した。
目撃情報も噂も全部本当だったのか。
「んんん!」
「逃げないと約束するならほどいてやる」
サビの利いた声。本当に動物なのか。マキは気持ちを確かに持ち、二度三度と頷いて見せた。
「一人で逃げても、またあの連中に捕まるぞ。今度は助からん」
今さらながら、オランウータンが助けてくれたと気づき、マキは心底お礼を言いたい衝動にかられた。
「んんん!」
「ワシのところにいれば安心じゃ。守ってやる。だから逃げんな」
「んんん」マキは頷いた。

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