《MUMEI》
今は何世紀だ? 4
オランウータンは器用に両足首をほどき、優しくマキの上体を起こすと、手首もほどいてくれた。
マキは自分で素早く猿轡を外すと、オランウータンを見つめた。
「ありがとう」
まだ油断はできない。宇宙人かもしれない。まさかロボットか。
「心配すんな。おまんには手は出さん」
「え!」マキはびっくり眼で口走った。「エスパー?」
「Sじゃない。安心しろ」
「でも今の読心術でしょ?」
「ああ。結婚はしてない」
話がズレた。マキは早とちりに気づき、言葉に慎重になった。
「あなたは…」
マキが言いかけたが、オランウータンが優しい表情で言った。
「悪かった」
「いいえ」
動物なのに、水着姿を見られるのを恥ずかしく感じた。
マキはホークのセリフを思い出したからだ。男性がそういう目で白いビキニを見ているとは船上で初めて知った。
「おまんの名前は?」
「マキ」
「マキ。いい名前だ」
思わず人間かっと頭をはたきたかったが、逆上されたらおしまいなので、マキは慎重な姿勢を崩さなかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫