《MUMEI》
今は何世紀だ? 5
マキは、勇気を出して聞いてみた。
「あなたのお名前は?」
「オランウータン」
表情が強張った。マキは緊張した。オランウータンは倒木に腰を下ろした。マキも友好的な態度が身を守ると思い、隣にすわった。
「オランウータン。そう呼べばいい?」
オランウータンは遠くを見つめた。
「所詮、人間が考えた名前だ」
何という緊迫感。マキは空気を和らげたかった。
日本語はどこで覚えたのか。あなたはどこから来たのか。知りたいことは山ほどあるが、聞くのが怖い。
そう思っていると、オランウータンのほうから質問してきた。
「マキ」
「何?」
「今は何世紀だ?」
マキは目を丸くしてオランウータンを直視した。
「どうした?」
「あ、21世紀だけど」
「21世紀?」オランウータンは激しく落胆した。「21世紀…」
マキは身構えながら聞いた。
「あなたは、何世紀から来たの?」
聞いた瞬間にキッと睨むので、マキは慌てて両手を出した。
「答えたくなかったら答えなくていいよ」
怯えるマキを見て表情を和らげるオランウータン。しかしポツリと呟いた。
「人間は信用できん」
「……」

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