《MUMEI》
科学の暴走 3
「マキ」
「ん?」
マキとオランウータンは、フレンドのように仲良く並んですわり、親しげに会話していた。
あまりアニマルには見られたくない光景だ。
「マキは、学生か?」
「あたしは、社会人よ」
「仕事は何してる?」
「……」
マキはためらった。職業を言ってもよいものかどうか。
「職業を聞いたからって、いきなり逆ギレしないでよ」
「ギャクギレ?」
「あ、逆上」
オランウータンが笑ったように見えた。
「大丈夫だ。マキはいい子だ」
マキは、緊張しながら答えた。
「あたしは、科学者よ」
「科学者?」オランウータンは真顔になると、立ち上がった。「科学者だと?」
「え、どうしたの?」マキは慌てた。
「ここへ何しに来た?」
科学者と聞いた瞬間に、オランウータンが激怒の顔に豹変した。マキは足がすくんだ。
「待って。あたしはあなたの味方よ」
「味方?」
「あたしを信じるっていうのは嘘だったの?」
マキの純粋な瞳に射すくめられて、オランウータンは気圧された。
「…嘘じゃない」
「じゃあ、すわって」
マキが腕を優しく掴むと、オランウータンはすわった。

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