《MUMEI》
科学の暴走 5
マキは、言葉を選んで話した。
「ウチの研究チームに目撃情報が寄せられて。それが、その…。アマゾンの奥地でオランウータンを見たと」
「ほう」オランウータンの無表情が怖い。
「それだけじゃなく、『今は何世紀だ』って日本語で聞いてきたって」
オランウータンは、また遠くを見つめた。
「そうか」
「びっくりしたわ。あなたに会うまでは信じてなかったから」
オランウータンは俯くと、小石を拾った。
「あいつらは随分デカいのう。ワシを捕まえに来たプロレスラーか?」
「まさか。高校教師や雑誌記者。ダンサーに船乗り。普通の人よ」
「そうは見えんかった。おまんが知らんだけかも。ワシの目は誤魔化せん」
マキはますます不安になってきた。自分の知らない別のプロジェクトがあったら、アウトだ。
(アイさん…そんな人じゃないと思うけど)
「ワシは無理やり、リングに上げさせられた。強くなるしかなかった…」
「未来で何があったの?」

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