《MUMEI》
科学の暴走 6
オランウータンはゆっくりマキの顔を見た。
「それを聞き出すのがおまんの役目か?」
「あたしは絶対あなたを裏切らない」
「裏切ったら?」
「裏切ったら。あたしの体を好きにしていいわ」
オランウータンは目を丸くした。
「本当か?」
「裏切ったらよ。裏切ってないのに好きにしちゃダメよ」
真剣に言うマキ。オランウータンは頭を両手で叩いた。
「ワシ、よく人間語理解できん」
「ふざけないで」
「あいつらが裏切ってもマキの責任だな?」
「違うわ。ほかの人は知らない。あたしが裏切った場合のみよ」
ここは重要だ。不確かなものに大切な体は賭けられない。
「無責任だな」
「でも、あたしがあなたを裏切ることは絶対ないから」
賭けに勝てそうもないと思ったか、人間のようにため息を吐くと、オランウータンは静かに話し始めた。
「マキ。人間は怖い。科学の暴走は止めないといけん。科学者が踏み込んではいけない領域を突破し、何でもアリになったら、危ない」

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