《MUMEI》
科学の暴走 7
マキは黙って聞いた。
「医学のためや、科学技術のためならまだしも、科学者個人の好奇心で動物実験し、そこに慈しみがなければ、ワシのような悲劇が起きる」
マキは胸騒ぎがした。受け止めきれない重い話なのか。しかし彼女は科学者。逃げずに耳を傾けた。
「もしも動物が言葉を覚えたら、いろんなことができる。ロボットの比ではないと」
マキはおなかに手を当てた。
「成功してしもうた。最初は科学者のアシスタント。そのうちサーカスやら、芸やら。皆普通の動物だと思ってるから、拍手喝采や」
マキは胸が痛んだ。
「しまいにプロレスのリングに上げられ、チャンピオンになってしもうた」
オランウータンは空を見上げた。
「ワシはバカのふりをした。わざと足し算間違えたり。会話もこんなに早口でなく、いちいち考えながら喋るふりをした」
「なぜ?」マキは怖々聞いた。

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