《MUMEI》
科学の暴走 8
「聞いてしもうた。もしもオランウータンの頭脳が、人間と大差ないと判明したら、躊躇せずに殺せと」
「ヒドい。許せない。自分たちが勝手にやっておいて」
怒るマキを、オランウータンは冷静な顔で見た。
「人間ってそんなもんやろ?」
「違う。そういう人間もいるかもしれないけど、本気で動物を愛している人間もいる」
オランウータンは無駄な議論とばかり、話を戻した。
「どんなバカなふりしようと、科学者にはバレる。ワシはそう思い、殺される前に研究所から脱走した」
マキは、いたたまれない表情で聞いていた。
「人間が犬と一緒に追いかけて来た。咬み殺されるのは嫌や。ワシは崖から海に飛び降りた。一か八かや」
マキは思わず唇を噛んだ。
「空中で気を失ったらしい。気づいてみたら、ここにいた」
マキは目を見開いた。
「タイムスリップ?」
「たぶん」
マキはオランウータンの腕を取った。
「全部話してくれてありがとう」
「じゃあ、約束通り、マキの体を…」
「そういうこと言うと嫌いになっちゃうよ」
「わかった言わん」
即答するオランウータンを見て、マキは笑みを浮かべた。

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