《MUMEI》

先輩は俺の声に気付き、目だけこちらに向けた。


俺は相手に気がつかれないように、
目だけで合図して先輩の近くを走った。


先輩からの素早いパス。


更にスピードを上げて相手チームへ切り込んで行く。


相手は俺がまだ未成年者のためか、
俺にはノーマークだった。


そのために誰にも邪魔されることなく、
ゴール真近に迫る。


そしてシュート。


回転を効かせて、
無理な角度からボールを蹴り上げた。


バシッ!!


ボールは、
キーパーのグローブに掴まる。


周りからは落胆と絶望の声。


だが当の本人、
俺だけは笑っていた。


獲物を狙うかのように、
ボール一点だけを見つめて。

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