《MUMEI》

「明日じゃ、明日の朝、領主がお前を引き取りに来る。」


「明日!?そんな…。」


「明日じゃ、その前に一つ頼まれておくれ。」


ジャックは怪訝な顔で首を捻る。
そんなジャックを博士は嬉しそうに見つめる。


「うむ、表情も出てきた、問題ないの。いやな、儂を妻の隣に埋めておくれ。この体は人の限界を越えておる。カラクリの心臓はもう止めた。まもなく儂も動かなくなる。」


「マスター!何故そのような!」


「儂はお前を託し、そして生涯を終える。新しい主に心から使えるのじゃ。涙を知ったなら涙を流させてはいかんぞ。」


そうして博士はくわえていたパイプを机に置き、ジャックの頭を撫でると、椅子に深く腰掛け、眠るように息絶えた。

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