《MUMEI》
臆病な強者
ザワ…


「…終わったな。」


ザワ…


「これ以上見てもしょうがないね。」


ザワ…












……………














赤高スタメンがベンチに下がると共に、


席を立つ一部の観客。


それは、


この時点で勝負がついたことを理解した者たちだった。


ハンドボールを知らない応援席に座る観客たちには、


この試合もまだ面白い物だったかもしれない。


が、


ハンドボールをよく理解している者たちにとって、


この展開は興醒め。


まだ体も技術も未熟な控えの1年生を出す余裕を見せるチームと、


体力と気持ちの切れ始めた崩壊寸前のチーム。


あとはただただ時間を消費するだけ。


1年生に経験を積ませる為というチームの事情など、


はたから見れば実のところ何の興味もない。


ここから追い付かれるのでは?


良い勝負になるかもしれない。


という期待も、


先に出場していたスタメンの実力を見ればわくはずもなかった。













……………














ザワ…


「…ふん。」


ザワ…


「どこ行くんだよ?」


ザワ…


「外。」


ザワ…


「はぁ?だってまだ…」


ザワ…


「関係ね〜だろ。」


ザワ…


「おい猪狩…」


ザワ…

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