《MUMEI》

「じゃあ、フェルと同調し過ぎるって言うのは、かすりかすりのはずの同調部分が、かすりじゃ済まない位。って事ですか?それとも、一致?」

「一致じゃ、俺と善彦が同じ。って事になってしまう。さすがにそこまでの同調じゃないよ。」

「あ、そうか。」

「ある波と、ある波。2つの波があるとして、まったく正反対の波だとしたら、それぞれの力を相殺して、波は治まってしまう。逆に、その2つの波が全く一緒だと、その力は2倍に膨れあがる。これは物理学で習う、単純な波の定義だ。」

「あ、さすが理科教師。知識は生物だけじゃ無いんですね?」

「馬鹿にするな。高校教諭理科の免許取るのに、俺がどれだけ物理と戦ったか…簡単な理屈なら、少しは分かるんだろう?優等生くん?」


なんか、たまに嫌味というか、毒を吐くなぁ山男…と、頭の中では思っても口には出さない。しかし顔にはそれが出ていたらしい。


「はは、どうも俺は昔から口が悪くて…教師って仮面を被っていれば、そこまでは出ないんだけど。今でも被っているつもりだったんだが、善彦の話題がチラチラ出るせいか、ボロが出るな。
そうだなぁ、フェルとの同調ってどの程度なんだろうなぁ。さすがにその生命エネルギーを実際の波形として見たことがあるわけでは無いから…結構良い線言ってる例えだと思ったんだけど、なかなか上手くいかないな。こればっかりは。」

「でも、一致までは行かなくても結構な部分被ってる。ってイメージで良いですか?
先生とサプリ、兄さんとサプリがそれぞれ同調している部分が結構あるとしたら、先生と兄さんが、波長の合う部分があってもおかしく無いでしょう。それであれば、今でも連絡取り合うくらい気の合う友達ってのにもつながります。」

「恐らくそうだな。そして、このフェルとの同調にはさらなる重要な要素がある。」

ワントーン声色を下げた山男が、いつの間にか逸らしていた視線を明智の方へ戻す。

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