《MUMEI》
出たく‥ない
.
―ガシャーン!!―
パイプと南京鍵がぶつかり合う音が、部屋中に響き渡る。余りの大きい音に、仕掛けた加奈子自信が驚いてしまった。
「辞めてくれ‥。」
リョウもその音が耳障りなのか、顔をしかめる。
「そうだね‥。こんなに大きな音出したら気付かれちゃうよね…。」
「そうじゃない。俺は此処から‥この檻から出るつもりはないんだ…。」
「何…言ってるの?」
耳を疑った。
まさかリョウ自信が出たがろうとしないなんて‥
「何で!?今逃げなかったら有馬達に何されるか分かんないんだよ?」
「あぁ、そうだな。」
「殺されるかもしれないんだよ!?」
「可能性は大きいな。」
「だったら‥っ!」
「だったら俺は殺される方を選びたい‥。」
リョウの瞳が悲しく光り、それでも力強く加奈子を見た。
「此処から出たらまたきっと‥いや、絶対に誰かを殺してしまう。その標的が、今度はあんたかもしれない…。」
「だから、リョウは私を…」
「殺せない、か?友達だから?」
リョウが鼻で笑いながら言うから…
「‥…」
何も言えずに、ただ浅く、小さく頷いた。
「あんた見ただろ、さっきの俺を!人間の血を吸う悪魔を!!
自分の欲の為なら親も友達も関係なくなんだよっ!!嫌だと思っても、欲には勝てない。自分を見失う…
だから…っ、だからあんたを殺さない保証は一つとしてないんだ!」
枯れてしまったリョウの涙…
代わりに声が泣いている。
代わりに私が泣いてあげる…
微かに震える声が、部屋と俯く加奈子の頭にいつまで響いていた。
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