《MUMEI》
母と二人
ひとり、ベットの中で
冷静に考えてみた

べつに、家族の誰かが嫌いとかじゃない

俺、何が嫌なんだろう

他所の家庭と違ったって、別にいいよな


俺、姉さんや、母さんの裸見て
やらしい事、考えてるのを知られるのが嫌なんだよな

父さん、みんなでお風呂入っても
立ったりしてないよな

何でだろ?

母さんと、そういう事したから
姉さんや、俺が産まれたわけだし

……

何をどう考えても

家族の中で、俺だけ、感覚が変なんだ

夜中まで、自問自答してたけど

答えなんて見付からなかったんだ


翌日、俺、具合が悪いって嘘ついて
学校を休んだんだ

眠かったし
何をする気も出なかったし
初めて、自分の都合で学校を休んだ

サボりだよね


昼ごろ、もそっと起きた俺
母さん、たしか習い事の日だよな

俺、冷蔵庫をあさって、適当に食べた後

風呂に入ったんだ


誰も居ない家、
のんびり、ぬるま湯に入ってたんだ

落ち着くなぁ

いつも、ソワソワしながらシャワーだもんなぁ


その時だった

母 「翔太、お風呂?」

母さんの声だった

翔太 「う、うん、少し具合 良くなったから」

母 「そう、ご飯は?」

翔太 「い、いらない」

浴室の扉越しの会話だった

母さん、習い事、行かなかったのかなぁ?


髪を洗ってる時だった

母 「翔太、入るわよ」

翔太 「えっ?!」

母 「見たかったら、見なさ い」

母さんが、裸で入って来たんだ

母 「翔太と二人でお風呂入 るの、何年ぶりかしらね」
翔太 「…」

母 「翔太、恥ずかしいの? 」

翔太 「…母さんは、恥ずか しくないの?」

母 「…翔太」
「貴方は、私のお股から産 まれたのよ」

「他人じゃないの」
「母さんは、恥ずかしくな いわよ」

翔太 「…」

母 「翔太が成長した証よ」
「異性の身体に興味を持つ のは普通の事よ」

「悩む事、たくさんあるで しょうけど、悩むのも、 成長するのに大切な事な の」

「お父さんも、わかってる わよ」

「翔太が、今、何を悩んで るか」

翔太 「…」

母 「綾奈も前にね、翔太と 同じように悩んでたわよ」
「お父さんや、翔太に、裸 見られるの恥ずかしいっ て」

「女の子だから、ちょっと 翔太とは、違うけどね」

翔太 「…わかってないよ、 誰も…」

母 「…そうかしら?」

翔太 「姉さんは姉さんだよ 、俺とは違うさ!」

母 「そう、」
「翔太は何を悩んでるの? 、話してほしいな」

翔太 「…」

母 「隠し事なんて、あって 当たり前よ」

「プライバシーも大事な事 よね」

「家族みんなでお風呂に入 るのはね、話せる事は話 そう」
「相談出来る事は相談しよ う」

「そういう意味もあるの」

「お父さんから、何度も聞 いてるでしょ」

翔太 「…」

聞いてるさ…
理解もしてるさ

……

母 「翔太の悩みって…話せ ない事なの?」

翔太 「…」

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