《MUMEI》
交流会逆鬼ごっこ25
薫が森の見回りをする事も、黒いレインコートを着る事も知っていた


けど


コイツは、薫じゃねー


身近な人間の気配くらいわかるし


俺を心配してた薫なら、俺の姿を確認したのに、こんなにゆっくり近付いて来ないはずだ


だから、男に背を向け、走り始めた


「ククッ」


後ろから聞こえてきた微かな笑い声は、やっぱり薫じゃなかった


そして、ソイツは足が速かった


もう、これは必要ねーな


つーか、走るのに邪魔だ


走りながら赤いレインコートを脱いで、後ろにいた相手に投げつけた


相手も俺と同じ事を考えていたらしく、既に黒いレインコートを脱いでいて


一瞬、特徴的な真紅の髪が目に入った


何で黒いレインコートを着ていたのか


薫をどうしたのか


その男


暁に訊きたかったけど


そんな余裕は無かった


時計を見る余裕もねー


でも、噴水の所にいた時点で、一時間以上経ってたし


森に来るまで、最低でも二十分は、かかった、はず


だから、残りは…


「残り二十分、一対一で楽しもうぜ」


頭の中の答えが出る前に、後ろから楽しそうな暁の声がした

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