《MUMEI》
生贄 1
マキは、広場のような場所に連行されていった。半裸の男たちが大勢いる。皆は、眩しいばかりの水着姿のマキを見て、淫らな目を輝かせた。
マキは生きた心地がしなかったが、気持ちを確かに持ち、唇を噛み締めた。
アドニスは上機嫌だ。マキの両腕を上げると、木の枝に手首をクロスして縛った。
脚は自由だが無抵抗と同じこと。先ほど降参してしまったからには、逆らえない。
「マキ。おまえは本当にかわいいな。どうだ。俺様の妻にならないか?」
マキは横を向いた。
「優しくするぞ。それとも、この人数を相手にするか? その華奢な体じゃ壊れちまうな」
怖くてたまらない。言うことが野蛮だ。
「プロポーズを断れば、そうなるってことですか?」マキが勇気を出して意見する。
「こうなってしまったらもう諦めろ。オレと甘い夜を過ごすか。大勢に滅茶苦茶にされるほうがいいか。考えるまでもないだろ?」
マキは深呼吸すると、答えた。
「どっちもヤです」
拒否されたアドニスは顔色を変えた。
「そういう生意気なこと言うと、おなかをボカボカ殴っちゃうぞ」
「え?」
アドニスはいきなり、マキのおなかを両拳で連打する真似をした。
「ボカボカボカボカボカボカ」
「きゃっ…」
当てないと思いながらも緊張する。マキは腰を引いて、腹筋に力を入れた。
「やめて…」

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