《MUMEI》
生贄 2
アドニスは面白がってやめない。
「ボカボカボカボカボカボカ」
寸止めどころか拳がマキのおなかに触れるので、ずっと腹筋に力を入れるしかなかった。
力を抜いたところを殴られたら気を失ってしまう。
「やめてください」
アドニスはいきなりマキを抱きしめた。
「あっ」
「かわいい。だれにも渡さないぞマキ。オレとここで暮らそう。すぐ慣れるさ」
首を縦に振ったら押し倒されて組み伏せられてしまう。
マキは唇を結んで神妙な顔をした。OKしないことが自分の身を守ることに繋がる。
「嫌なのかマキ?」
「少し考える時間をください」
「NOなのか?」アドニスが怖い顔で迫る。
「NOとは言ってません」
「YESか?」
「待ってください」
脈なしと思われても身が危険だ。マキは身じろぎした。
布を手にすると、アドニスは何を思ったかマキに目隠しをした。
「何ですか?」
「見えないといつボディーブローが来るかわからないから怖いだろう? ハハハ」
そう言うとアドニスは、マキのおなかにゆっくり拳を当てる。
「やめてください」
(あたしが怯えるのを楽しんでる…)
かといって、ド変態と罵るわけには行かない。
「ボカボカボカボカボカボカ」
「やめてください、お願いですから」

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