《MUMEI》 生贄 4さすがのアイも恐る恐る険しい道を進んだ。 どんな獣が飛び出して来るかもわからない。不安だ。 鳥の鳴き声が遠くから聞こえるが、怪鳥を想像してしまう。 ピューマのような猛獣が出てきたらアウトだ。アイは段々心細くなってきた。 しかし下見はしてきたのだ。道に迷うことはない。 危ない橋を渡る。ここが近道なのだ。下は川。落ちたら助からない高さ。しかも今にも落ちそうな古い橋。 ギーギー鈍い音がするが、道なき道を行くよりはマシだ。 橋を渡ると、また険しい山道。枝を拾うと、辺りを警戒しながら進んだ。 サラサラサラサラ。音がする。 「ヤダ、オランウータン?」 アイは立ち止まって様子を見た。半裸の男が草むらから顔を出し、アイを見ると、声を上げた。 「おーい! 女がいるぞ」 「イイ女じゃん」 「ヒューヒュー!」 複数いる。淫らな笑顔で走ってきた。アイは身の危険を感じ、慌てて逃げた。 「逃げたぞ捕まえろ!」 「ヒューヒュー!」 アイは必死に逃げた。捕まったら何をされるかわからない。 (ヤダ…どうしよう?) 結局いちばん怖い動物は人間か? 前へ |次へ |
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