《MUMEI》
VS 3 Map seeker
教師寮での生活にもようやく慣れたとある日の事
無駄に広く、そして片付けが行き届いていない其処を一人
岡本が掃除に走りまわっていると
廊下にある電話が、突然になり始めた
「電話……」
鳴り響くソレを眺め見、はたしてそれを自身が出てもいいものか、と考えながら
だがこのまま放置しておくのも先方に失礼だとの考えに至り
岡本は受話器を取る
「はい、教師寮です」
『環さんですか?雪路です』
出てみれば電話の相手は桜岡で
何かあったのか、珍しく慌てている様だった
その様子に何事かを問うてみれば
『それが、今日授業で使う予定だった資料を忘れてしまって……。リビングのテーブルの上にあると思うんですが、確認して貰ってもいいですか?』
「はい、分かりました」
電話を子機へと持ちかえ、岡本はリビングへ其処にあるテーブルの上に茶封筒が一つ
無造作に置き去りになっていて
「あ、ありましたよ。雪路さん」
『良かった。すみませんが環さん。厚かましいのですが、それを持ってきて戴く事はできませんか?』
「私が、ですか?」
『ええ。申し訳ないばかりですが、今忙しくて身体が空きそうになくて。お願いさせて戴いても構いませんか?』
桜岡からの懇願に、岡本は部外者である自分が校内に入ってもいいものかを一瞬悩み
だが困っている桜岡に、否とは言えず
「解りました。今から、行きますから」
返事を返し、受話器を置いた
そして封筒を手に取ると
「よし!行ってやるんだから!」
決意に前を見据え、そして身支度を整えると寮を後に
「えっと……。高等部の校舎があそこだから中等部の校舎はあっちで……」
辺りの校舎の位置関係を確認しながら進んで行く
だが中々目的に辿り着く事は出来ず岡本は途方にくれてしまう
「……どうしてだろ。着かない」
目的の建物は見える
ソレに向かて歩いているつもりなのだが、どうしても辿り着けない
「……もしかして私、道に迷ってる?」
辺りを見回し、見覚えのない場所に立っている岡本
どうやら言葉通り、道に迷ってしまったらしい
「ど、どうしよう……。本当に道に迷っちゃった」
その事に漸く気付き、岡本は脚を止め途方にくれる
帰り道すら見失い、その場に立ち尽くしていると
「……何やってんだ。お前」
既に耳に馴染んでいる岡部の声が背後から
振り返ってみればその表情は呆れた様なソレで
だが岡本にしてみれば、今の岡部は天からの助けも同様だった
「……これ以上迷子になりたくなけりゃ、付いて来い」
岡本の状況を瞬時に理解し、どうやら道案内を買って出てくれるらしく
歩き始めた岡部の後に続き到着した其処は
目的地だった、職員室
岡部の後に続き、岡本も中へと入っていく
「雪路さん、何処だろ」
背伸びをし、懸命に桜岡を捜しはするが見つからず
岡本は偶然に其処に居合わせた小森へ、その所在を問うていた
「雪?ああ、雪ならさっきタマちゃんが来ないって探しに出て行ったけど」
「え?私を捜しに?」
「うん。五分位前かな。すれ違ってない?」
おかしいな、と小首を傾げて見せる小森へ
岡本がどういう事かを問うて質すより先に岡部の溜息が聞こえてくる
「やっぱ大人くしてなかったか」
「雪ってば心配症だから」
「他人の心配する前にテメェの心配しろってんだよ。あのウルトラスーパー方向音痴が」
「そだよね〜。これじゃミイラ取りがミイラだし」
呆れた様子の岡部、そして何故か楽しげに笑う小森
話しを聞くに、どうやら岡本を探しに出かけ桜岡も迷子になってしまったらしく
此処で穏やかに談笑などしていてもいいものか、と
岡本は傍から聞いていて気が気ではない
「わ、私、探してくる!」
言うや否や踵を返した岡本
部屋を出ようとした寸前
丁度入ってきたらしい平田とぶつかった
「何してんだよ、タマ公」
「だ、大吾!雪路さん、雪路さん見なかった!?」
「雪ィ?見てねぇけど。何だよ、また行方不明かよ。雪の奴」
岡部、小森の様子を窺い、そして苦笑を浮かべて見せる小森のソレに
「で?タマ公はその所為で慌ててるってワケか」
状況を理解したらしい平田は微かに肩を揺らす
そして徐に携帯を取って出していた
何をしているのか、覗きこんでみれば

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