《MUMEI》
生贄 6
アイは広場に連れて行かれた。連行されてくるアイを見て、マキは目を丸くしたが、アイがすぐに目をそらす。
(他人のふりしたほうがいいってこと?)
マキは唇を結び、アイの姿を追った。
アイを見てアドニスが笑う。
「なんだその美人は?」
「俺たちの顔見たら逃げたんです」
「ハハハ。犯されると思ったか?」アドニスは上機嫌だ。「きょうはよく女が釣れる日だ」
アイも両手首を木の枝に拘束されてしまった。
マキからは5メートルくらい離れている。
アイはもがいた。アドニスのような危ない男が目の前に来ると、さすがに怖い。
「女。なかなかイイ女だな。名前は何て言うんだ?」
「ジェシー」
「あとで偽名とわかったら痛い目に遭うぞ」
「…ごめんなさい。アイです」
アドニスは笑顔で睨む。
「痛い目に遭いたいらしいな?」
「ごめんなさい、ごめんなさい」アイは慌てた。
「よーし。一回は許してやる。二回はないぞ」
「すいません」
アイがホッとしたのも束の間、アドニスは子分に言った。
「おい。身体検査だ。服を脱がせろ」
「待って!」アイは身じろぎした。
(嘘!)
マキも目を見開く。アイが裸にされてしまう。それを黙って見ていていいのか。
(アイさん…)

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