《MUMEI》
生贄 8
アドニスはまた腹パンチ連打の真似をした。
「ボカボカボカボカボカボカボカ」
「やめて、やめて!」
マキは腰を引いて哀願した。
「やめて、やめてください!」
ようやくやめてくれた。
「マキ。今度生意気なこと言ったら、本当にボカボカするぞ」
「…はい」マキは暗い顔をした。
アドニスはしつこい。
「しかし見ず知らずの他人を助けるとは大した度胸だ」
「男の人にはわからないかもしれませんが、裸は耐え難いですよ。だから…」
「それじゃマキが身代わりになるか?」
アドニスはビキニの紐を引っ張る。マキは腰をくねらせてアドニスの手から逃げた。
「やめてください」
しかしアドニスは面白がって脱がそうとする。
「やめてください、お願いですから」
「かわいいなあ」
マキはひたすらアドニスの手から逃げようと腰を動かす。
(あたしの怯える姿見て楽しんでるんだこのド変態!)
「やめてください。そういうことは」
(でも今は我慢だ。絶対無傷で帰るんだ)
アドニスは、マキをからかうのをやめると、再びアイのほうへ行った。
「貴様。マキがいたぶられてるのに、黙って見ているとは薄情だな」
「え?」
アイは赤い顔をしてアドニスを直視した。
「そういうわけでは…」
アイは緊張した。今度こそまずい。

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