《MUMEI》
生贄 9
アドニスが得意の斧を出した。アイは慌てふためく。
「あっ」マキも口を開けた。
「や、や、どうしよう?」
本気で怯えるアイの股に、アドニスは容赦なく斧を当てた。
「そんな…」アイは真っ赤な顔で両目をきつく閉じ、白い歯を食いしばった。「やめて」
「ほらどうする? ホレホレホレ」アドニスは斧で股間をコンコン叩く。
「やあん!」アイは唇を噛んだ。失禁しそうな恐怖だ。
「突き上げていいか?」
「ダメ!」
「突き上げてやろうか?」
「ダメです」
強気のアイも女の子。本気で汗だくだ。マキは迷った。しかし口を挟めば自分がやられる。
(この男はホントに傷つけたりはしないと思うけど…)
アドニスは怖がるアイに聞いた。
「俺様が本当に突き上げると思うか?」
「思いません」
「なぜだ?」
「信じてます。そんなヒドいことしないと」
自尊心をくすぐられたアドニスは、笑みを浮かべた。
「いい顔するなおまえ。おまえの表情はいいぞ。危機一髪の場面で強気のヒロインが怯える姿。絵になるぜ。芸術的な美を感じる…何変態だと?」
「言ってません」
「心の中で言っただろ?」
「言ってません」
「それじゃ何か。俺様の気持ちがわかるって言うのか?」
「わかります、あたしもSですから」
「じゃあきょうはMになれ」アドニスが斧を上げる。
「やめて」アイは背伸びした。「やめてお願い」

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