《MUMEI》
「だから、タンクトップだけはやめとけって言ったじゃない。」
未来がそう言い終わった瞬間に、後ろからガラスが割れるような音が。そして、その音とともにとてつもない冷気が襲ってきた。
リクの能力が開化したのだ。
「いくらなんでもこんな時に。」
未来が身構える。
「やめとけ未来、こいつの能力は氷だ。俺と相性ピッタリだぜ。」
そう言うとジーンズのポッケから葉巻を取り出し口にくわえ火をつけ吹かし、拳を構え始めだ。
もうさっきリクがいた場所にリクの姿はなくそこにはつららでできたニードルボールが浮かんでいた。
「未来。そのまま浮かしとけ。人間に邪魔されちゃ迷惑だからな。」
「わかった。」未来は両手をニードルボールにかざし目をつぶった。
「じゃあ、いくぜ。雪だるま。」
そう言うとダリルはニードルボールに飛び掛かりどんどん炎の拳でつららをへし折っていく。
つららは折れたり解けたりしているがまたどんどん生えてくる。
「早くリクを正常に戻さないと、死んじゃうわよ。それに私ももう、持たない。」
未来は両手をかざしたまま片目を開け言った。
「わかったょ。すぐおわらせるさ。」
ダリルは火の玉になりニードルボールの中央まで飛んだ。
そこでは、リクが目をつぶって気絶していた。
(かなり広いな、小さい部屋一部屋分はある。)
「おい、坊主おきろ。おい、起きろって。」(パシッ)ダリルはリクの顔を思い切りビンタした。
「うっ、う〜ん。なに??ここどこだ??」
リクは目を覚ました。すると、とたんにリクを覆っていたニードルボールも消えた。
「何があった??」
リクは周りを見渡した。ニードルボールの下にいた乗客が10人死んでいたのだ。
「お前の力が暴走した。」ダリルはリクの肩に手をやり言った。
「うそ…嘘だ。俺は力を使ったことも感じたこともない!」リクは急に立上がり言った。
「だから、暴走した。坊主、俺達と一緒に来い。力の操り方を教えてやる。」ダリルは暖炉のような暖かい声で言った。リクは何か言いたそうな目をした。
「わかってる。乗客は全員無事、空港に送ろう。元々一般人を殺してもなんの意味もないしな。」
「じゃあ、わかった。一緒にいくよ。」
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