《MUMEI》
言い訳
夏休み終わり
父さんも帰国して
家族全員揃った暮らしになったんだ

叔父さんの事?でゴタゴタしてたし
父さんの足も
まだ本調子じゃなかったから
約束だった家族旅行も行かなかったんだ


俺、極力、姉さんを避けてた

二人りっきりにならないようにしてたんだ

けど…

学校が始って
また、姉さんと一緒に通学しなきゃならなかった

毎朝、同じ電車に乗って

ちょっと電車が混む日なんかはやっぱ

姉さんと、身体が触れてしまう…

意識しちゃダメだ…

俺の意思を無視するように
俺の身体の一部が硬くなる
姉さんに
気付かれないようにしなくちゃ

……

父さん、親戚に
伯父さん家を買い取ってくれと頼まれたらしいんだ

けど、抵当権っていうのを銀行が持ってて

話しがややこしく

結局、どうにもならなかったらしいんだ

伯父さんに
お金を貸してた親戚は

何とか回収したくて

伯父の負債を
誰かがまとめて買い取ってくれればと
父さんに話しを持ち掛けたんだって


父さんは、協力出来る事はしてあげたかったみたいだけど

みんな、あまりに自分勝手な言い分みたいで

結局、父さんは
何も協力しない事を選んだんだ

元より、縁、切ってた人だしね

……みんな

父さんのお金目当てなんだな

少しでも、自分だけでも
回収出来るように

父さんを、上手く使おうとしてるだけなんだと

母さんが言ってた

父さん、それを承知の上て、少しでも、良い方向になるならと
考えたようだけど…


破産管財人に全てを任せるのが良いと
結論を出したんだって


お金が絡むと
人って醜くなるのかなぁ?

漠然と、そう思った俺だった


一段落したのか?

父さんが旅行に行こうと言い出したんだ


俺、体育祭の準備とかあって

学校休めないよ

と、言ったんだ

父さん、残念そうな顔してた

……

その日の夜

姉 「私のせい?」
「旅行、行かないのは?」

姉さんが、俺の部屋に来て
そう聞いて来たんだ

翔太 「ん?……姉さんのせ いじゃないよ」
「俺自身のせい、かな…」

姉 「お父さん、淋しそうな 顔してたよ」

翔太 「うん…」
「わかってる…」

「けど、今は…」

姉 「…翔太、ずっと私を避 けてるよね?」

翔太 「…意識、しちゃうか ら…」

姉 「…裸なら、見られたっ て、平気だし」

翔太 「そうじゃないの」

「わかってよ」

「俺、かなり必死に堪えて るんだよ ……」

姉 「…」

翔太 「姉さん、理解してな いんだよ…」

姉 「そんな事、ないよ」

翔太 「ある!…」

姉 「…」

「決め付けないでよ…」

翔太 「…」

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