《MUMEI》
暗闇への案内
暗い路地、藪蚊にたかられた外灯がぼんやり光る


ファミレスからの帰り道

人通りの少ない路地を
自転車で進む

貴則のバカ話は、ここでも続いている


話の軽さと反比例して自転車のペダルは重い


ライトを点ける為のダイナモのせいだ…



「自転車しんどいなぁ…原チャリの免許でも取ろうかなぁ」


「やめときなよ。バレたら、停学だよ」


「相変わらず真面目だなぁ、与一郎は…」



「…」



「んッ?どうした?急に黙って…」



「…なんか、すごく臭くない?」



「いや、別に」



「…なんか、雨に濡れた野良犬みたいな臭いがする…。…これって、どっかで嗅いだ…あッッッ!!」



この臭い…


思い出した…


妖怪屋の地下通路…



「貴則ッ!引き返そうッ!この道は、ヤバいッッッ!いますぐ引き返すんだッ!」


僕は自転車を止め、Uターンさせた…

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