《MUMEI》

携帯の液晶画面にはこの付近の地図
一体これが何なのか暫く眺めていると
不意に、地図上へ赤い点が現れた
「これ、雪路さんなの?」
色々と移動するその赤い点を指差せば
平田は徐にその携帯を岡本へと放り投げる
「ま、こっからはテメェだけで頑張って探せ。俺、これから授業だし」
「ちょっ……、大吾!?」
「じゃぁな、タマ公」
岡本の引き留める声にも脚を止める事を平田はせず
手を軽く降るとその場を後に
押しつけられた携帯をまじまじ眺め、そして岡本は途方にくれる
どうしたものか、と岡部達へと無言で訴えれば
「仕方無いな。僕、一緒に雪探してあげる」
何故か楽しげな小森に岡本の腕は引かれる
「ほら、早く行こ。タマちゃん」
「ちょっ……!華!?そんなに引っ張らないで〜!」
いつの間にか岡本から携帯を受け取っていた小森
ソレを確認しながら近道にと細い道を次々通っていき
まるで猫の様にあちらこちらを移動していく
「そろそろ近いよ。この辺の筈なんだけど――」
視線を巡らせ、辺りを見回し確認する小森
岡本も同じに見回してみれば
その姿を見る事は出来なかったが、何処からか桜岡の声が聞こえてきた
「おや、お前も道に迷ってしまったんですか?実は私もなんです」
困りましたね、などと道行く野良猫とじゃれあいながら桜岡は一人言に呟く
どうやら背後に近付いてきている岡本達の気配に気付いていないらしく
僅かばかり困った風に桜岡は呟いていた
「……あんまり困ってる様に聞こえないよ。雪」
その様を桜岡に気付かれない様物陰から眺め
だが何故身を潜めているのか
岡本は小森へとその旨を問う
「別に意味はないんだけどね。何となく微笑ましくて」
「でも、そろそろ行かないと授業……」
「そだね。じゃそろそろ行こうか」
残念と肩を竦ませながら
小森が桜岡へと見える様手を振って向けた
「こんな処で会うなんて奇遇ですね。どうしたんです?」
「それはこっちの台詞だと思うけど。いい加減道位覚えようよ、雪」
溜息混じりに言う事をしてやれば
だが桜岡は困った風に笑むばかりだ
「もういい。そろそろ授業始まるよ」
「そう、みたいですね。色々と歩き回っていたら時間がなくなってしまいましたね」
どうしましょう、と服についてしまった砂埃を払いながら
だが表情的にはあまり焦ってる良湯巣は見受けられず
浮かべた笑みはそのままに小森へと向いて直る
「……雪、もしかして僕に何か期待してる?」
「はい」
悪びれる様子もなく、桜岡が頷いて見せれば
小森は何を返す事もせず、溜息一つで携帯を取って出す
何所へ掛けたのか、その会話を伺って見れば
「トラ〜。ごめんだけど雪迎えに来て〜」
どうやら電話の相手は岡部の様で
暫くの沈黙の後
「ありがと、トラ。じゃ、なるべく早くね」
岡部からは諾の返答があったらしく
小森は礼を言いながら電話を切っていた
ソレから岡部が現れたのが十分程度経ってから
バイクのエンジン音を高々と唸らせながらの登場だ
「……ったく、手間掛けさせんな。雪」
「毎回すいませんね。高虎」
「もう慣れた。いいから、さっさと後ろに乗れ」
桜岡へとヘルメットを投げて寄越し、それを受け取った桜岡は後部座席へ
そして何故か、岡本へもヘルメットが投げて寄越された
「トラ、タマちゃんも乗せてくんだ」
「まぁな。放っとくとまた何所行くかわかったモンじゃねぇし」
「三人乗りって思いっきり道交法違反だけど?」
「学校の敷地内って事で見逃せ」
悪ガキの様な笑みをその口元へと浮かべ
そして岡部は岡本を自身の前へ
しっかり掴まる様短く伝えるとバイクは走り出した
「ねぇ!華はいいの!?置いて来ちゃたけど!」
気に掛ったその旨を訪ねてみれば
「あいつなら別棟の方で今から授業だ。あそこからなら歩いて行った方が行き易い」
「そ、そうなんだ」
落ちる事が無い様岡部へとしがみ付きながら、それを聞き一応は安堵する
それから岡部が器用にバイクで細い道を抜け
本校舎へと早々の到着だ
「助かりました、高虎。いつも、手数をかけますね」
「年中遭難してるって自覚はあるみてぇだな。安心した」
含みのある物言いをしてやれば、桜岡は困った風な笑みを浮かべて見せ

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