《MUMEI》

それに……。


“ありがとうございます”


別れ際の女の笑顔。


あれは反則だろ……。


また思い出しては目頭を抑える将貴。


「やべぇ…可愛かった。」


ポツリと呟いた自分にまた、
頬を染めた。







パッパーー


しばらくして1台の車が近付いてきた。


真っ黒で、大きな外車。


左側の窓が開かれ、
部下の林が顔を覗かせた。


「頭、迎えに上がりました。」


「おう、サンキュ。」


平静を振る舞い、
車に乗り込む将貴。


車の中には林の他に、
兵頭がいた。

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