《MUMEI》
危ない橋 5
アニマルが無事渡ったあと、マードック、ホークが慎重に慎重に渡りきった。
ダスティが騒ぐ。
「何だみんなそのへっぴり腰は。根性ねえなあ。マキを見習え」
「マキを?」橋を渡ろうとしたスタンが振り向く。
「そうだ。見せ場をつくれ。パフォーマーとしての資質が足りないぜみんな。本当にアメリカ人か?」
「油断するなダスティ。落ちたら終わりだ」
「受け身を取ればいい」
スタンは呆れ顔で首を振った。
「何十メートルあると思ってる」
スタンは軽口に付き合っている場合ではないと思い、橋を渡ろうとした。ダスティが後ろから「わあ!」と背中を押す。スタンが二歩三歩つんのめった。
「ふざけないで!」アイが向こう側から怒鳴った。
「テメー」スタンが怒り顔で指を差す。「今度ふざけたらバックドロップだぞ」
「こんな石ころだらけの所で怪我でもしたらどうすんだ?」
スタンは無視して橋を渡った。慎重に慎重に渡る。ダスティが後ろからうるさい。
「スタン。高所恐怖症か?」
「違う。近眼なだけだ」
「フォー!」
まさかとは思ったが、橋を揺らした。マキが血相変えて怒鳴る。
「ダスティ! やめなさいよ!」
「今度やったら殺すぞ!」スタンが睨む。
ダスティはカメラを回しながら笑っている。
スタンはようやく無事に渡りきると、言った。
「よし。橋を焼いて落とそう」
「スタン」マキは焦った。
「ジョークだ」
「本音だろ?」ホークが笑う。

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