《MUMEI》

「兄ちゃ達もあの家に泊まるんだよね?」
「あぁ、父さんも母さんもみんな揃ってるぞ」
「じゃあ、勢揃いだね!武をみんなに紹介しなくっちゃ!梅ちゃんとはるちゃんの事もね♪」
「かなたお前は、余計な事言うなよ…」

なんだか色々と大変な事になってきたような気がした…。


河に沿って走る車の窓の外を眺めると、日本のような広告看板がいっぱいあるワケでもなく変わらない退屈な風景が流れていた。

それに、俺は初めての旅行という事もあってか精神的にも疲れてしまっていて、飛行機の中でもあんなに寝ていた筈なのに車の揺れと共に眠気に襲われて窓の外を眺めながらウトウトとしていた。

周りを見ると隣の梅子ちゃんも助手席のはるかも、膝の上に座っていたかなたもいつの間にか眠ってしまっていた。

「お前も寝てていいぞ」
「あっ…」

突然、運転している克哉さんが俺にそう言ってきたので、こっちは逆に驚いて眠気が飛んでしまった。

「長旅で疲れたろ」
「ぁ…はい…」

いつも見る克哉さんとはちょっと違う…何というかいつも俺をイジってくる手厳しい雰囲気じゃなくて、どことなく機嫌がいいような気がする。

「なんか…いつもと違いますね」
「分かるか♪」

なんとなく聞いてみたんだけど思いっきり当たってたみたいで、ニコニコしながら克哉さんは機嫌の良い理由を俺に話してくれた。

二人の家に同居している小さなくるみって子が、これから行くかなた達の親父さんの実家へ先に預けていたらしくって、久しぶりに恋人のアキラさんと水入らずで過ごせたのが嬉しかったようだった。

子供がいると全部子供の時間になっちまうんだろうな、それで二人だけで過ごせる時間がそんなに楽しくなるのか…。

…子育てって大変なんだな。
  

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