《MUMEI》

脩は後ろから小声で僕にそう話しかけて来たけど、克哉さんと目が合うとピヤッと僕の背中に隠れた。

そりゃあの目に睨まれたら…ね。

「克哉さん脅さないで下さいよぉ〜」
「お…脅して無いぞ、見ただけだ」

克哉さんはよく、物を見るときにあんな睨むような顔になる事があった。

本当は可愛い目をしている人なのにな…。

『でもさ、何であの外人がお前ん家居るんだよ?』
『えっ…』

言われてみれば、ホテルで僕の事を聞いてきただけの外国人が何の経緯で一緒の部屋に居て寛いでいるんだか。

確かに変な状況ではあった。

「友達だよ///ほら、バイトしてる時に仲良くなったんだι」

確かに、ホテルでバイトしている時に仲良くなったんだ…。

でも”友達”と言うのはちょっと嘘つくみたいで抵抗があったけど、克哉さんはそんな事に不機嫌になるでもなく、ずっと脩の様子を見つめていた。

一応、脩はそれで納得してくれたみたいで靴を脱いで部屋に上がってきた。

「今日はコレを持ってきただけじゃないの?」
「え、いやゲームしようかと思って」

そう言って脩はバッグからゲームソフトを取り出すと、いつものように部屋をウロウロして冷蔵庫を勝手に開けるとアイスを食べていた。

ゲーム機のあるリビングのテレビの辺りまで来ると、そこのイスに座っていた克哉さんと目が合っていた。

「ぉ…どうも」
「あぁ…」

お互いに初めてなので何だかギクシャクしていて、脩はゲームをセットしながらも克哉さんの方をしきりに気にしていた。

「ねぇおさむー、お茶はいつものでいいよね?」
「あぁ…」
「いつも…来ているのか?」

(そりゃ友達だから来るのは当たり前なんだけど…)

「うん、たまにね…」

海外の友人関係がどのくらいの親密さかは知らないけど、こっちではそんなにしょっちゅう訪ねてくるワケでは無くて、今日みたいにたまに来ては遊んでいったり泊まりに来たりしていた。

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