《MUMEI》

「アキラそっちだっつーの!」
「まだ、そっちのアイテムチェックしてから…」

僕らがゲームをしている間、克哉さんはキッチンで何かを作っているようだった。

『あいつとどう知り合ったんだよ?』
『えっ///あ…向こうから話しかけられて…』

レストランで目が合って、ラウンジで声を掛けられて部屋に行ったら…。

…普通そんな事あるのかな?

『ねぇ、よくお客さんに話しかけられる事ってある?』

そう聞くと脩は「うん、あるよ」と言って普通にゲームに戻ってった。

(やっぱりあるんだ…)

でもまさか突然キスされるような事は無いんだろうな…。

…怖そうな克哉さんだったからいいけど、もし怖いおじさんとかだったら。

そう思ったら背筋がゾクッとした。


さっきから台所でケーキを作っていたと思ったら何故か揚げ物の音がしたんでそっちの方を見ると、克哉さんがフライパンを取り出して何かを揚げていた。

「え、揚げ物?夕食って全然まだですよね?」

揚げ物、といえば夕食という頭なのでゲームを中断して台所の克哉さんの所に行くと、唐揚げではなく丸めたクッキーを揚げていた。

「シュネーバル、雪玉って意味のドイツの菓子だぞ」
「クッキー、美味そうじゃんか♪」

ゲームをしていた脩も台所まで来ると、克哉さんの作った揚げたてのクッキーをヒョイっと食べてしまった。

「アチッ///」
「そりゃ揚げたては熱いだろう…」
「ふふっ///」

それにしても揚げたクッキーなんて初めて見た。

それは卵ぐらいの大きさで、何かを作った切れ端を適当に丸められているようだった。

「普通はこのくらいのボールのような大きさなんだけどな、フライパンしか無かったんでゴルフボールくらいになってしまって…」

”このくらい”と言って克哉さんはこぶし大ぐらいの丸を手で示してみせていた。

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