《MUMEI》 「…簪とかならココじゃないですかね…違いますよね…」 「そこも見てみたいな…行こうか!」 「えぇっ///」 僕はなんとなく言ってみただけだったのに、克哉さんはいいアイデアだと言わんばかりに目を輝かせて半ば強引に僕の腕を引きながらその和風小物のお店へ向かってった。 「似合うなアキラ♪」 「ぇ…えぇ…///」 やっぱりあの時の友達のように、僕に似合うと言って色々な簪をあててきていた。 「赤いのより深い色の方が似合うな、こっちの黄色いのもいいな…」 向こうにいる店員さんがこっちをキョロキョロ気にしながら見ているのが視界に入っているけど、僕もこの状況をどうしていいんだか分からなくてウロたえていると克哉さんが僕の頬を触ってきた。 「ぁっι」 「日本には髪を上にあげて白い肌にする伝統があるだろ」 「し…白塗りですか、あれは砥の粉を塗るんですけど…///」 芸者さんがするような白塗りの事を言っているんだろう、実は子供でもお祭りの時なんかに白塗りにしたりする事はあるので僕も白く塗った事はあった。 首の後ろにヒヤッと塗られる感覚とかが怖くって、化粧の間じゅう母さんに必死にしがみついて泣いてたっけな。 「着物を着てこの簪をしたら似合いそうだな…何かおかしかったか?」 「えっ、いや何でも…///」 昔の事を思い出して笑うなんて、今まで無かったな。 大きな大人がいっぱい来て顔中グリグリされている状況が怖くて泣いていたんだけど、今考えてみれば大人も大泣きする子供相手に大変だったんだろうな…。 「あの白塗りは男もするんだろ、歌舞伎なんか舞台に居るのは全員男なんだもんな」 「そう言われてみればそうですね…」 言われてみれば歌舞伎は全員男の人だ。 中にはとっても綺麗に女装…女形というのかな、あんなおじさん達が化粧してるなんて…。 改めて考えてみると凄い状況だなと思ったけど、それなら案外と僕でもイケるんじゃないかなと目の前の鏡に映る自分を見て思ってしまった。 前へ |次へ |
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