《MUMEI》

「アキラも綺麗だろうなぁ///」
「ぁ…はぁ///」

そういうふうに白塗りされたチビ松な僕をみんなは”可愛い可愛い”と言ってくれていた、きっと泣き腫れていた僕をあやそうとしてくれていたんだろうけど。

でも…兄さんに一言だけ『可愛いぞ…』と言われて頭を撫でられて、それから泣きやんだんだっけ…。

いつもは怖い兄さんにそんな事を言われて驚いたのもあるけど、兄さんに可愛いと言われてとっても嬉しかったのを覚えていた。

「女形だと…白く塗って全然変わっちゃいますからね…」

向こうを見ると店員さんは視界から居なくなっていた。

きっと男二人で簪とか見ているからだろう、僕らの距離が近すぎるのもあるかもしれないけど…。

本当は堂々と手を繋ぎたいし…腕に寄りかかったり、あの厚い胸板に頬を寄せて頬ずりしてみたい。

…そこまで外で堂々とイチャイチャするのはどうかと思うけど、でも…手だけは繋いでみたい。

そう思うのは、いけない事なのかな…。




出来上がったスーツに袖を通すと袖も裾もピッタリとした丈で、腰回りや背中側もすっきりとしていてとても体にフィットしていた。

「うん、なかなかサマになってるな」

そう言って僕の側に来ると、やっぱり克哉さんはさっきみたいにやたらと腰の周辺を触ってきていた。

「……///」

僕は何も言えずにされるがままになっていると、克哉さんはやっと手を離して試着室を出て向こうに行ってくれた。

「はぁ///」

家ならどんなに触られても嬉しいくらいなんだけど…やっぱりこんな所でこんな事されると恥ずかしい。

”止めて下さい”と声を上げる事も出来たけど、そうすると中で何をしているか分かってしまうし。

試着室の中といっても一応外なのであんなに触ってこられると…変な声が出ちゃうかもしれないじゃないか…。

なので僕は唇を噛んで必死に耐えていた。

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