《MUMEI》

「どうしたアキラ、行くぞ」
「えっ///ぁ…」

僕が試着室の中でぼんやりしていると、外から克哉さんが覗き込んできた。

「服とか着替えなくていいんですか?」
「そのままでいいよ、さあ行くぞ」

克哉さんにそう急かされ僕は急いで服をまとめてバッグに入れると、先を歩く克哉さんについて行った。


「あの…克哉さん、先にお会計してくれたんですね」
「あぁ、私からのプレゼントだ」

あのお店は僕が行くような値段が前面に書いてある所じゃないから、このスーツなんかかなり高いんだろう。

僕はそれに見合う僕なんだろうか…。

「その荷物、どこかに預けようか」

そう言われてみて建物のガラスに映った自分の姿を見ると、カバンだけが子供っぽく浮いていた。

「そうですね…///」

クロークに荷物を預けると、手ぶらで煌びやかな中を二人で歩く。

夜になってくると商業施設だから綺麗にライティングされて、カップルなんかも多くなってくる。

そんな中、手を繋ぐでも無く二人だけで歩いていると、克哉さんがある建物を指さして『今日はココを予約したんだ』と言ってきた。

そこは白亜の豪邸というような建物のレストランだった。

あまりの事に目眩を起こしそうになったけど、気をしっかり保つと背中に手を置いてくれた克哉さんと共にその白亜のレストランに入っていった。



案内してくれた人は僕らをチラリと見ると、お辞儀をして向こうへ行ってしまった。

周りは中年くらいの女の人ばかり、男性が居ても相手は女性だったりして僕らみたいな二人組は見当たらなかった。

「克哉さん…」

話しかけようとしたら前菜というものが運ばれてきた。

「ん…何だ?」
「ぁ…いや…何でも///」

いつもそうなんだけど、こういう所で食事するのって…緊張する。

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