《MUMEI》
夢の中の出来事 1
皆は船に戻った。橋を壊して多大な迷惑をかけたはずのダスティが、いちばん元気だ。
「でもミラクルじゃねえか。パニック映画って、たいがい一人ずつ死んでくじゃねえか。それが全員無事とはな」
「一人死にかけたけどな」ホークが笑う。
「単調な物語は受けないからな」
「単調ってことあるか」フランクがダスティを睨んだ。
ダスティは、まだTシャツ一枚のセクシーなマキとアイを見ると、言った。
「普通Wヒロインだとどっちかサメに喰われるよな」
「川を泳いで帰りたいか?」マードックが睨む。
「泳ぎたくない。泳ぎたくない」ダスティは踊りながら下がった。
「パニック映画の見過ぎだぞダスティ」ビリーが呆れる。
アニマルはゆっくりと、マキの隣に立つ。マキは大河をながめていた。
「マキ」
「ん?」
「オランウータンと、何か話したか?」
マキの髪が川風に揺れる。
「…夢を見たわ」
「夢?」
「そう、夢」
アニマルは真剣な表情でマキの横顔を見た。
「あたし、オランウータンにさらわれて、怖くてずっと気を失ってたみたい。その間に、物語のように長い夢を見たわ」

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