《MUMEI》

 「ちょっとソコ座れ、お前ら」
その日の夕方
一日の授業も全てこなし、両へと帰ってきた四人
だが身を寛げる間もなく
岡本と桜岡は何故か岡部に呼び出しを食らっていた
「どうかした?高虎」
「何かあったんですか?」
呼び出されたその理由がいまいち理解出来ず
二人揃って首を傾げて見せれば
何かがキレる様な音が岡部から聞こえてきた気がした
「……方向音痴が揃いも揃ってウロウロするな!」
もの凄い剣幕で怒鳴られ
二人はそこで漸くその理由に思い至った昼間の、迷子騒動
その件に関して言い返す言葉はどちらにもなく
唯々言われるがままだ
「もうそれ位にしときなよ、トラ。雪路はともかくタマちゃん可哀想だよ」
「私はともかくって、華……」
「雪路は毎度のことだからね〜。トラが怒るのもわかるけど〜」
途中、小森は態々言葉を区切ると岡本の頭へと手を置き、髪を撫でてやりながら
「タマちゃんは初めてなんだし。程々にしてあげなよ」
岡本を庇ってやる
岡部は岡本の方をチラと見やると
その申し訳なさげな顔にそれ以上何を言う事も出来なかった
「……もういい。夕飯まで俺は寝る」
漸く説教が終わり、岡本の頭へと岡部も手を置くとそのまま自室へ
後に残った三人
互いに顔を見合わせ、安堵に肩を落とす
「有難う御座います、華。助かりました」
「別に〜。あのままトラ喚かせてたらこっちも迷惑だもん」
割って入ったのは自身の為でもあるのだ、と
子供の様に無邪気に笑いながら
「じゃ、僕もご飯まで部屋に戻るね。出来たら呼んで」
小森も部屋へと入っていった
桜岡と岡本
後に残された二人は暫く互いに見合うと
「……夕飯、作りましょうか」
「そうですね」
時計が示す夕飯時のソレに台所へと向かい
冷蔵庫を開く
「見事に何もありませんねぇ」
食材がほとんど入っていないソレを見、桜岡は珍しく困った様な顔で
どうしたものかと二人で暫し考えこみ、そして
「じゃ、買い物に行きましょう、雪路さん!」
「買い物、ですか?私達二人だけで大丈夫でしょうか?」
さっきの今で、と苦笑を浮かべる桜岡
その件に関しては岡本も思わないでもない
だが
「きっと大丈夫です!それに、食生活の方が大事ですから!」
何の根拠もなく、堂々とした主張
尤もらしいそれに、桜岡も納得したのか
ウロウロするな、との岡部の言葉もすっかり忘れ、二人は買い物へ
だが、やはり道にはしっかりと迷ってしまい
腹を空かせた小森には泣き喚かれ
平田には大笑いで馬鹿にされ
岡部からは大目玉を食らう羽目になった……

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫