《MUMEI》

木々が次々と流れる中、ふと木の姿が消えたかと思うと、一軒の大きく、そして古い和風の屋敷が見えた。

けれどそれもすぐに流れてしまい、仲間達は残念そうに席に戻った。

一瞬だけど見えたあの家…。何だかイヤな感じがした。

古くて大きい屋敷だったせいか、暗くて重い雰囲気があった。

見ただけで背筋が寒くなるような…そう、純粋な【恐怖】を感じた。

霊感なんてアタシには無いハズだけど、あそこはヤバイ気がする。

でも仲間達は何も感じなかったようで、明るい笑顔に戻っていた。

…これじゃあ口を出しても、周囲を白けさせるだけだ。

アタシは周囲に悟られないよう、静かにため息をついた。

やがて電車は駅に着いた。

好奇心に満ちた眼で歩いていく仲間達の後ろ姿を追いかけながら、周囲を見回して見た。

辺りに民家はあるけれど、田んぼや畑に囲まれていて、一軒一軒が遠い。

…交流あるのかな?

疑問に思っていると、喫茶店を見つけた仲間の1人がお昼にしようと言い出した。

そして流れるように、喫茶店に入った。

喫茶店には優しそうな二人の中年男性と女性がいた。

各々メニューを見ながら好きに注文した後、男性に思い切って話しかけてみた。

あの空き家について。

すると男性の笑顔が曇った。

どこか困り顔で、アタシ達に肝試しに来たのかと尋ねてきた。

慌てて仲間達が否定するも、信じてはいないようだった。

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