《MUMEI》

電車で見た時は感じなかったが、あの屋敷は駅から結構遠かった。

しかも森の中だ。

迷ったらそれこそとんでもないことになるだろう。

けれど仲間の歩みは止まらない。

アタシは歩きながらも、さっき聞いた話を思い出した。

例の子供の行方について。

普通なら、殺しに来た人達を返り討ちにして、逃げたと考えるだろう。

でも逆の発想をすれば、それは不可能に近いのではないだろうか?

1人対複数。この図式はあまりに不利と見える。

しかも屋敷に居た全員を殺めたというのは、いくら子供が優秀でも成せることとは思えない。

…まあ昔の話だから、どこまでが真実なのかは全然分からないんだけど。

やがて例の森の入り口にたどり着いた。

…着いてしまった。

森の入り口には1つのお地蔵さんがいた。

お地蔵さんを見ているうちに、ふと何かが引っ掛かった。

それはお地蔵さんに供えられているお水とお饅頭だ。

どちらもまだ新しい…。

ついさっき、誰かがそなえたみたいだ。

今時お地蔵さんにおそなえをする人なんて、珍しいな。

そう思いながら、森の中に足を踏み入れた。

道は土道ながらも一本道。

昔は馬でもひいていたのだろう。幅が広くて歩きやすかった。

…歩いて20分ほど経ち、アタシ達はとうとう例の屋敷の前に来てしまった。

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