《MUMEI》

そこで仲間の1人が割り箸を取り出した。

どうやら番号が書かれているらしく、ペアを組んで行こうと言い出した。

そして引いたら…何故かアタシだけがペアを組む人がいなかった。

それもそのはず。

アタシ達は男4人に女3人。ペアにしようとすれば、必ず誰か1人はあぶれてしまう。

仕方無いので、1番目に行くペアが戻ってきたら、3人で行くということになった。

…別にここで待っていても良いんだけどな。

でもそんなアタシの思いも虚しく、1番目のペアが屋敷の門をくぐり、中に入って行った。

アタシは深く息を吐いて、仲間の中から離れた。

ちょっと周囲を見てくると言って。

周囲は木ばかりで、ここから近くの家まで歩いて30分以上もあるだろう。

…だから屋敷で起こった惨劇の真実は、この屋敷にいた人間以外、誰も分からない。

「本当にその子供だったのかなぁ」

などと呟きながら、屋敷の周りを歩いていると、裏側に小さな社を見つけた。

小走りで近付いてみると、どうやら屋敷とは背中合わせのように建てられている。

だから鳥居も家とは逆方向にあった。

でも…ここでも同じだった。

森の入り口のお地蔵さんと同じで、お供えされた水とおまんじゅうが置いてある。

同一人物がやったことかな?

社も鳥居も年季は入っていたけれど、ボロイというところまではいかなかった。

手入れがされている。

こういう田舎町では、森の中の神様まで大切にしているのか。

そんなことを考えながら、鳥居を潜り、社を覗いて見る。

社の中には、小さなお地蔵さんがいた。

優しく微笑んでいるけれど…どこか薄ら寒く感じるのは何故?

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