《MUMEI》

でもとりあえず、何かお供えしたほうが良いのかもしれない。

屋敷の中では、仲間達が肝試しなんかしているし…。

…そう言えば町の中を歩いてて気付いたことだけど、この町には神社やお寺を見つけられなかった。

もしかしたら町外れにあるかもしれないけど、でも電柱や案内板があってもおかしくはないのに…。

不思議に思いながらも、カバンからお菓子をいくつか取り出した。

チョコ、クッキー、アメ、ポテチ…。

おっお供えになるのって、アメぐらい?

でもこのアメ、ジュース味だしなぁ。

本当はお饅頭や金平糖など、ちょっと昔の和菓子も持ってきていた。

けれど仲間達全員に配ってお終い。

手持ちは安っぽい洋菓子しか残っていない。

途方に暮れていたせいか、背後の気配に全く気付かなかった。

―ねぇ、お菓子くれない?

「えっ?」

慌てて振り返ると、2人の少年がいた。

まだ12歳ぐらいだろうか?

1人はニコニコしていて、1人はブスッとしている。

―おねーさん、屋敷にいる人達のお友達?

あっ、もしかしてこの町の子供かな?

ここへ入っていくアタシ達を見かけて、追いかけてきたとか…。

まあ大人達のように、咎めたりはされないだろう。

「えっええ…。どうしてもこのお屋敷で肝試しがしたいと言ってね。アタシはあんまり乗り気じゃないんだけど…」

―でも一緒にいるなら、同罪だ。

ぶすっとしている男の子に言われ、胸にグッサリ言葉の矢が刺さる。

「そっそうね。結局は同じよね…」

シュン…となると、ニコニコ顔の少年がアタシの頭を撫でた。

―ゴメンね。コイツ、口悪くてさ。

いや、キミも結構…。

そう思った時だった。

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