《MUMEI》

さっきまで不機嫌だった男の子まで、カバンに手を突っ込んだ。

…おかげでほとんど無くなってしまった。

まっ、いっか。

駅付近には商店街があったし、帰りにそこで買えば。

「じゃっじゃあアタシは戻るわね。キミ達も暗くならないうちに、早く家に帰った方が良いわよ」

―うん。お菓子、ありがとね。おねーさん。

―じゃな。

「うん。じゃあね」

軽くなったカバンを持ち直し、アタシは駆け足で仲間の元へ向かった。

―…おねーさんだけは見逃してあげるよ。

―ああ。アンタだけは、な。

2人の少年の呟きが、風に乗って聞こえたけれど、アタシは振り返らず進んだ。

…この後起こることを知らずに。

仲間達の元へ戻ると、すでに2番目のペアは行ってしまったとのこと。

少々空気が悪くなっていたけれど、それでも10分が経ち、次のペアが行った後は少し雰囲気が柔らかくなった。

でも2番目のペアが戻ってきていない。

そのことを1番目のペアの2人に言うと、中は散らかってはいたが、進もうと思えば奥まで進めるとのこと。

だから奥まで行っているんだろうと言っていた。

この肝試しにはまず、地図が無い。

はじめての所なので、みんないろいろ見て回りたいのかもしれない。

中は薄暗かったが、そんなに怖くなかったと言うのが少しありがたい。

2人とも不気味さはあったけど、今は平気な顔をしていたから…。

やがて10分が経った。

2・3番目のペアが戻って来ていないけれど、アタシ達の順番が来たので、屋敷の中に足を踏み入れた。

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