《MUMEI》

薄暗い中、2人の少年はそれでもしっかりした足取りで歩く。

―ねぇ、おねーさん。この屋敷の話、知ってる?

「んっと…、噂話程度なら。ここで多くの人が亡くなったとか…」

―その話なんだけどね。

笑顔の少年がクスクス笑いながら、そして無愛想の男の子は不機嫌に語り出した。

かつてこの屋敷であったことを―。



昔、この屋敷の主人は多くの女性と関係を持ち、子供がたくさんいた。

その中で、よりにもよってこの地方の神様を祀る女性に手を出し、男の子を産ませた。

その男の子は頭が良かった為、主人は母親から男の子を奪い、この屋敷に連れ去り、養子とした。

だが周囲の者達は、その少年が主人の実子であることに薄々気付いていた。

そして跡継ぎに、少年を選ぶのではないかと囁かれ始めた。

やがて疑惑は悪心を呼び起こし、主人が遠出している時、ついに家の者は少年を手にかけようとした。

しかし―逆に家の者が、皆殺しにあった。



「…そこまではアタシも知っているわ。でもその少年は…」

―うん、行方不明になったって言われているね。でも大事なこと1つ、忘れていない?

―大事なこと?

―ああ。その少年の母親が、巫女だったってことだ。

巫女…そう言えば、説明された中にそんな風な言葉があったっけ。

「でもそのことと、少年のことがどう関係するの?」

―この地域の神様ってちょっと変わっててね。この町にお寺や神社がないこと、知ってた?

「えっええ。看板も見当たらなかったわね」

―それはこの町に、寺や神社が必要ないってことだ。

「でも少年のお母さんは、神様に仕えていたんでしょう?」

―…まあそこがちょっと複雑なところでさ。

少年達の説明は続く。

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