《MUMEI》
一縷の
俺と水瀬とじゃあそんな風にはなれない。
七生の才能は認めているけど、身近に居すぎたあまり、嫉妬の対象にもなる。

劣等感に襲われる。

二人の会話に上の空な返事ばかりしていた。
もうたくさんだ、こんな俺には。





「じゃあまた学校でね」
水瀬の姿がぼんやり曲がり角から消えていく。水瀬は本当に俺の前からもそうやって消えていくのかもしれない。

「何ぼーっとしてんだよ!
いやだいやだ彼女に見とれてたのか?」

「考え事」
素っ気なく答えてやった。

「ホレ、携帯出せ」
少し俺の対応に懐疑心を持っているようだけれど、構わず俺の鞄の中をまさぐり出した。

「え、何だよ」

「水瀬が何かと連絡が不便だからアド教えといてって言ってたじゃん。」

「なんで七生が水瀬のアドレス知ってるの」
卑屈になってる。

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