《MUMEI》 …そう語る少年の声は、少し沈んでいた。 彼等のことを、少なからず心配しているからだろう。 やがて、日の光が差し込んできた。 出口が近いんだろう。 アタシはぼんやりしながら、2人の少年を見た。 アタシの目の前にいる、2人の少年。 彼等のアタシの手を掴む小さな手は、とても冷たかった。 まるで…生きていない人間の手のように。 その後は3人とも無言で歩き進む。 時折、いろんな所から人の声や物音が聞こえてくる。 …楽しそうだ。 それだけが、彼等の唯一の救いなのかもしれない。 例え一生、この屋敷から出られずとも、彼等には心から笑い合える仲間がいるのだから…。 アタシと違って。 屋敷から出て、門をくぐった時、夕日の眩しさに目が一瞬眩んだ。 すでに外は夕方色に染まっていた。 入った頃はまだ、お昼過ぎだったのに…。 「随分…時間が経っちゃったのね」 ―この屋敷には、時間なんぞ関係ないからな。 ―まっ、戻って来れたのが『今日』なだけ、ラッキーだよ。今なら電車にも間に合うし。 そう言って、2人の少年は手を離した。 冷たい2人の手のおかげで、アタシの心も静かになっていた。 「…ねぇ、アタシの仲間達はどうなったの?」 ―あの人達はすでに、彼等の仲間だよ。 笑顔の少年に言われた言葉に、思わず意識が飛びそうになった。 …いや、予想はしていたことだった。 「なら…どうしてアタシは無事なの? …いえ、見逃してくれたの?」 前へ |次へ |
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